半導体技術に関するレポート

これは管理人Oriosが2003年度の総合学習の夏休みレポートということで作成したものです。 このレポートは提出予定の文章であるため、この文章の全部又は大部分を複製した文章の作成は堅く禁じます。 但しこのレポートを参考にする程度、若しくは著作権法で認められる引用は制限しません。 もう一年前に提出したようなやつなんで何やっても構いません(2004/10/17)。


序章 動機

私は将来工学系に進もうと思うので、その分野に関するレポートを書こうと思った。 それで、工学系で今注目を浴びているものを調べていくうちに一つが半導体であることがわかった。 ということで今回は半導体についてを知り、将来に役立てることを目的にこのレポートを作成する。

第1章 半導体・集積回路とは何か?

このレポートでは半導体技術、特に集積回路技術について述べようと思うが、 その前にまずそもそも半導体・集積回路とは何かということについて述べようと思う。 身近に聞く半導体、聞いたことはあっても意味はとなると意外と知られていないと思われる。 ということで百科事典(1で「半導体」を引いてみると以下のように書かれてある。

「電気伝導率が金属のような良導体とガラスのような絶縁体の中間の程度の大きさをもつ固体物の総称」

これだと分かりにくいと思われるので平易な言葉でまとめると、 電気が通りやすいわけでもなく通りにくいわけでもない中途半端な物質ということとなる。

次に先程述べたとおりよく分からない中途半端な物質がいかに使われているのか分からないので、それについて述べる。 具体的な利用用途はの通りであるが、概していえることは現代の世界において無くてはならないものがほとんどである。 私も半導体の利用用途を調べていて、予想していないものがいくつかあがっていることには驚いた。

以上が「半導体」そのものについてのレポートだが、この半導体という言葉には 「『半導体』の性質を利用して作られた『半導体デバイス』を省略したもの」(3 という意味がある。この半導体デバイスというのがいわゆる集積回路である。 ということで今度は集積回路とは何かということについて述べるが、 また百科事典(1で今度は「半導体集積回路」という項を引いてみると、 「多くの回路素子が一つの基盤内または基板上に分離不能の状態に結合されている超小形構造」 とある。つまり集積回路とはトランジスタなどの部品が基盤内に埋め込まれている状態のもの指している。 この集積回路だが「半導体のできるまで」(4というサイトによると、 集積回路はシリコンの単結晶をベースにした板(ウェーハ)に回路図を焼付け、 必要なところにイオンを注入して素子を内部に作ったものにアルミの金属膜を張るなどの工程を経て作られるとのことである。

以上が半導体・集積回路に関する基礎的な情報をまとめたものである。

第2章 集積回路の歴史

この章では現在に至るまでの集積回路の歴史について述べる。

まずはトランジスタの前よりも前の時代に活躍をしていた真空管の歴史から述べる。

真空管は「1904年イギリスのフレミングによ」り「二極管」(1と呼ばれる種類のものが発明された。 続いて「1906年アメリカのド・フォレストによ」り「三極管」と呼ばれる種類の真空管が「発明」(1された。 この三極管というのは「無線電信やラジオ放送の実用化となる検波、増幅、電磁波の発信できる」(5ものである。 そしてこの「真空管を18,000本使った『ENIAC』と呼ばれる世界初の電子計算機が1946年に完成した‥‥が。大電力を必要とし、大発熱その上、真空管の信頼性が低く、継続使用はできなかった。」(5 またENIACは「重量30トン」、「その幅は約150フィート」(6とのことである。 つまりこのENIACは電子計算機という新しい世界を切り開いたという点ではすばらしいが実用性には少し問題があったというものである。

以上が真空管の歴史であるが、真空管はトランジスタに比べて大きく、また信頼性も低いため時代はトランジスタに移る。

トランジスターの歴史は「1947年12月ショックレーは点接触トランジスタを完成」(5したことに始まる。 しかし「点接触トランジスタは特性が不均一で不安定だった」ため「接合トランジスタが登場し」(5た。 このトランジスタは「小型でこわれにくい特長をも」(7っていて、また「消費電力も少な」く「発熱もしない」(5ため 「トランジスターの導入によってコンピューター部品の小型化、高密度化(こうみつどか)が進み、性能が一段(いちだん)と向上し」(7た。

このトランジスタによってコンピュータをはじめとする電気製品の世界に新たな光が差しこむこととなる。 そしてさらに小型化に役立つものができるのである。それが集積回路だ。

集積回路の歴史は「1958年 テキサスインストルメンツ社が世界初の集積回路 integrated circuit のデモンストレーションをおこな」(8ったことに始まる。 そして「1961年 フェアチャイルド・セミコンダクタ社が商業ベースで集積回路の製造を開始」(8した。 この後、「ドライエッチングとスパッタによる薄膜形成技術の開発などによって」(5集積回路、いわゆる「ICはどんどん小さくなって、1970年代に入ると、LSIの時代にな」(5り、 さらに「'70年代後半になると超LSIの世代が見えて」(5くるなど「半導体はより高集積化され」(5てくる。

ちなみにこの中に出てくるLSIとは1000〜10万個の部品が、超LSIは10万個から1000万個の部品が集まった集積回路を指す。(9

以上が半導体・集積回路の歴史の流れである。

第3章 半導体技術の現状と展望

前章では半導体の歴史を述べてきたが、ここでは前章の半導体の歴史のその後にあたる今の半導体の技術について述べる。

まず集積回路の技術の進み具合を表す値としてDRAMの容量というものがある。 DRAMとは「bitの情報を記憶するメモリセルが、コンデンサとトランジスタ1つずつで構成されているRAM」(10である。 これの特徴は、資料10によれば「DRAMはSRAMより遅くなる傾向がある。しかし記録密度については、同程度の製造技術を用いた場合、DRAMはSRAMの約4倍の密度を実現できる」ということである。 で実際にこのDRAMの発展はどうかというと、資料11のとおり年を追うごとにどんどん増えており、現在1GBレベルに達している。

また、集積回路の微細化の指標としてトランジスタのゲート長というものが用いられる。 このゲート長とは「トランジスターのオン/オフを切り替えるスイッチのサイズ」(12のことで資料13の図を参照すると大体の感覚がつかめると思われる。 そして現在、どのくらいの技術であるかというと、 2002年12月に「ゲートの長さがわずか6ナノメートル(6nm:毛髪の2万分の1に相当)の、世界最小のシリコン製トランジスターの試作に成功」(12したほどである。 この報告の通り、今の半導体技術は既に1ナノメートル(100万分の1ミリ)を単位とする世界に入っているのである。

半導体技術の今について指標となる数値について代表的なものを2つ挙げたが、この半導体技術の進歩については「ムーアの法則」と呼ばれるものが存在していると言われている。 これは、「Intel社の創設者の一人であるGordon Moore博士が1965年に経験則として提唱」(14したもので「半導体の集積密度は18〜24ヶ月で倍増する」(14というものである。 つまりこれは1年半たてば同じ面積内に2倍、3年で4倍、4年半で8倍……とねずみ算式に素子が配置できるようになるというものである。 実際、これを証明するかのように資料15には 「1993年に出た最初のペンティアムはトランジスタの数が約310万個だった。 1997年に登場したペンティアムIIは約750万個のトランジスタが指先くらいの大きさに集積された。 さらに、2000年に登場したペンティアム4だと2000万個以上、 内蔵されているキャッシュメモリーの分も合わせると4000万個を超えている。」とあるのだ。 これを考える限り法則は成立していると言えるだろう。 で、このムーアの法則の何がすごいかというと、資料11に「半導体デバイスの研究成果は何度も限界説を打破してきた歴史をもつのである」とあるように、 今までに何度もムーアの法則は成り立たなくなるだろうという限界説が出ていたにもかかわらず、それを乗り越えてムーアの法則が成り立っているということである。

そして、これからの半導体技術の発展についてだが、まず問題は大きさである。 先程ゲート長が6nmのトランジスタについて述べたが、 この「6〜7nmという数字は、シリコン単結晶中のシリコン原子間距離(約0.3nm)やシリコン酸化物中のシリコン−酸素イオン間距離(0.4〜0.5nm)を考えると、原子が一方向には十数個しか並んでいないということ」(11である。 つまりこの後もどんどん微細化が進むとそのうち原子の大きさという大きな壁にぶつかるということである。 また「微細化の限界より先に消費電力の過密化による発熱が致命的な問題になりそうだという予測が共通認識されてき」(11ている。

しかしそれでも「2020〜2030年頃まではこれまでのペースを保ちながら進んでいくのではないかと期待されている」(11そうだ。 私も今までムーアの法則が成り立っていっていることを考えると半導体技術の今後の発展を期待していいと思う。

第4章 まとめ

初めに述べたとおり私は将来工学系に進みたいと思っているため、基礎知識としてこのレポートを書いたが、 書いてて半導体技術の進歩の速さがすごいことに改めて驚いた。

最後に内容を簡潔にまとめると、今まで集積回路はものすごい速さでどんどん小さくなっていき、かつ性能がどんどん上がっていっている。 そしてこれからもしばらくの間は同じ速さで進展していくと思われるということである。

私が大人になる頃にはどの位進歩しているのかが楽しみである。


表:半導体の使用用途
解説
光の露出計(1 「光によって電気抵抗が減少する程度は光の量の大小に左右される」(1性質を利用したもの
半導体整流器(1 「半導体と金属とを接触させた部分を通じて電流を流すと,一定の大きさの電圧でもどちらの向きかで電流の大きさに著しい差異が生じる」(1ため 「電気の交流を直流に変えること」(2に利用される。
検波器(1 整流性を利用し「高周波交流を直流に変えて音声電流をとり出す。」(2AMラジオで使用。
トランジスタ(増幅器)(1 「半導体中の電子と正孔(電子の集団のなかにできた電子の<抜け穴>)の電流の二つを使い分けて」(1「電波の振幅を大きくする」(2
熱電冷却用素子(1 「結晶に電流を流したとき試料の両端に温度差を生ずる効果」(1を利用したもの
ひずみ計(1 「力学的変形に対して電気伝導率の変化が大きいことを利用し」(1たもの

参考文献

1)平凡社『世界大百科事典(1970年版)』
2)岩波書店『岩波国語辞典第三版』
3)「第1回 半導体とは?・・・@」 http://www.elec.muroran-it.ac.jp/labs/device/semicon/handou/handou1.html
4)「半導体のできるまで」http://www.towajapan.co.jp/process/0101.html , 0102.html , 0201.html , 0202.html
5)「半導体の歴史」http://www.anelva.co.jp/news/fukutarou/ [ http://www.anelva.co.jp/fuku/techw/fm5.htm ]
6)「ENIAC誕生50周年記念物語 〜その歴史を追って〜」http://www.unisys.co.jp/ENIAC/eniac00.html ,eniac01.html
7)-年代別にみる歴史- 1950年代 [トランジスター] http://www-6.ibm.com/jp/event/museum/rekishi/trans.html
8)「マイクロコンピュータの歴史 著作: PSP 内倉憲一」http://www.technetjapan.com/JP/History/
9)愛光学園49期2002年度理科3の授業内容のノート
10)「ASCII24 - アスキー デジタル用語辞典 - DRAM」http://yougo.ascii24.com/gh/01/000111.html
11)「シリコン半導体デバイス研究に対する大学の関わり」http://www.nistep.go.jp/achiev/ftx/jpn/stfc/stt025j/0304_03_feature_articles/200304_fa03/200304_fa03.html
12)「IBM News - ニュース - IBM、ゲート長6nm−世界最小のシリコン製トランジスターを開発」http://www-6.ibm.com/jp/NewsDB.nsf/2002/12102
13)http://www2.crl.go.jp/pub/whatsnew/press/010410-2/1.gif
14)「e-Words : ムーアの法則」http://e-words.jp/w/E383A0E383BCE382A2E381AEE6B395E58987.html
15)「PC View:ムーアの法則」http://www.pc-view.net/Help/manual/0422.html

[追記 (2004/08/02)]

書いた当初は存在していたものの現在はリンク切れになったり、リンク先が変更しているものもあります。 なのでリンク切れになったものは<a>タグを外し、リンク先が変更されたものは変更先のものに変えました。


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